小説 · 2024年10月5日

生前川中島(晴信が景虎ちゃんを殺せたif)

殺害の描写があります(さらっとね)













 掴んでしまえば、どうということはなかった。
 どこにでもいる女と同じ、俺の片手で足りる程度の、細すぎるほどに細い首。弓籠手越しに脈打つものを感じて、ああ、この化け物のようなものにも血が通っているのか、と、いささか気味悪く思った。口をふさがれた景虎は何も言わず、抵抗すらしない。首か背中に入った一撃が、この女から命以外のすべてを奪ったらしい。その目に映るのは絶望や怒り、あるいは悲しみなどではなかった。遊び道具を取り上げられてつまらなそうにしている子供のような、諦めに似ている冷たさがあった。
 この女は殺されたがっている。そう感じた直後に、そんな直感を頭から否定したくなる。理解できてたまるものか、こんな女、こんなもの、こんな――
(殺そう)
 血は見たくなかったので縊り殺すことにした。息を塞ぐのも血を止めるのもまどろっこしいので、頸の骨を砕こうと決めた。みし、と、嫌な感触が指先から這いずってくる。その刹那に、景虎は目を細めておそらく――笑った。死の間際に笑うのは、この女がやりそうなことだと思った。しかしこの顔は、恍惚に目を細めているとしか思えない表情は、なんだ? この女は、殺されかかっている間際にあっても、俺を蔑み辱めるというのか?
 かっと血潮が沸き立つのを感じた刹那に、右手は骨を砕いていた。景虎は薄ら笑いのまま事切れている。末期の一瞬、その体が痙攣するように跳ねた様がまるで絶頂のようで――事実俺は、骨の砕ける感触に精を漏らしていた。物言わぬ躯を見下ろしながら、だらだらといつまでも、ただ地獄のような快楽が、総身を蝕んでいる。





発掘されたSS

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